『白山通り炎上の件』は、会社でのジェンダーや職場の人間関係に悩む女性を描いた作品であり、現代社会に生きる若者の孤独感や生きづらさをテーマにした作品です。
この作品は、短編投稿サイト「monogatary.com」において公開され、文藝×monogatary.comコラボ賞の大賞を受賞し、YOASOBIによる楽曲化が決定しています。
普通のOL女性が、ひょんなことから裏社会とのつながりの扉を開けてしまう・・
その展開は意外な方向へと急展開を遂げるスリリングな物語です。
その内容は、銃撃戦やカーチェイスなど映画さながらのアクション要素と、現代的な女性の苦悩が巧妙に織り交ぜられています。
この2つがどう組み合わさっているのか。
本記事では、この『白山通り炎上の件』について、あらすじや感想とともに新曲はどのようになるのか予想をしていきたいと思います。
YOASOBI原作『白山通り炎上の件』あらすじは?【ネタバレあり】
主人公の「のぞみ」は、職場の男性、特に年上の「おじさん」たちに気に入られなければ居場所がなくなるという厳しい現実に直面しています。
彼女はかつて、自分の意見を率直に述べるタイプでしたが、その結果、周囲から孤立し、「生意気」とされ、居場所がなくなってしまいました。
なにをするにも「おじさん」によって決められ、自分の元には決められたものしかこず。
自分のアイデアを通すことは損することであり、「おじさん」とうまくやっていくことが、社会でうまくやっていくことであり、これが「正しい若い女」とされていると悟ってしまいます。
その経験から、今の職場では「おじさんたちに気に入られる」ことを生き残るための戦略として採用したのぞみ。
具体的には、心にもないことを言っておじさんたちに媚び、彼らに好かれるように振る舞うこと。
そんな生き方に疑問を感じながらも、居場所を失わないためには仕方ないと自分に言い聞かせています。
しかし、このような振る舞いを続けることで、女性の同僚や後輩からは「バカっぽい」と見られ、孤立感を深めていきます。
そんなのぞみにいつもの「おじさん」からマッチングアプリを勧められます。
最初は拒みながらも、いつものように彼らに好かれるように振る舞うために、わかりましたと返答してしまいます。
これが物語を急展開させていくことになります。
のぞみはなんとなくデートをしてマッチングアプリをつかったという事実を残すだけのために、アプリをダウンロードし、相手をマッチングしていきます。
そしてそのマッチング相手と会う当日。名前は「カザマ」。しかしその相手は女性であり、殺し屋でした。
そのマッチングアプリと殺し屋のマッチングが同じ会社で運営されており、のぞみが適当に打っていた絵文字が仕事募集の暗号になっていたそう。
ちなみに作中にでてきた「ブリーフィング」とはビジネス用語で、簡単な報告や事情の説明、状況の要約を行うことを意味しています。
つまりカザマからすると資料を使いながら情報の共有をするために、喫茶店に入ったことになります。
カザマは殺しの仕事をするためにのマッチングだったわけですから、最初の二人の出会いのシーンで、のぞみがデートだと思って気合を入れた格好をしているのをみて、「珍しいタイプ」というのも不思議ではありませんね。
ここまででもびっくりな展開です。
ここでブリーフィングをやっていくなかで、カザマは女性であることやなども含め、お互いの誤解が解けていきます。
そして急な銃声。
狙われたのはのぞみでした。
誰かにやとわれた殺し屋が窓の外からのぞみを狙って打ってきたのです。
それがあったから運営側が殺し屋とのマッチングをさせたのかもしれません。
ここからは非現実というか映画さながらのアクションシーンへと様変わり。
カーチェイスや銃撃戦の始まりです。
そしてのぞみを殺すよう依頼した人物は、のぞみも知っている意外な人物でした・・。
YOASOBI原作『白山通り炎上の件』感想は?
この作品は、現代の職場で女性が直面するジェンダーの問題を鋭く描いており、共感を得る方も少なくないのではないでしょうか。
特に、女性が「おじさんたち」に好かれるために自分を犠牲にしなければならない現実や、女性同士の微妙な関係性がリアルに描かれており、多くの読者にとって共感や苦痛を感じる部分があるでしょう。
また、主人公の「のぞみ」が過去の経験から学んだ「おじさんに媚びること」を戦略として選ぶ姿勢が、社会の不条理さや女性が置かれる厳しい立場を痛感させます。
それでもなお、彼女が完全に自分を失わず、かろうじて自己を保とうとしている姿が、読者にとっては希望や励ましにもなるかもしれません。
物語全体を通じて、現代社会における女性の生きづらさが強調されており、社会に対する批判的な視点が色濃く反映されています。
ジェンダーの不均衡や、年齢や性別によって異なる権力構造がどのように人々の関係性を形作っているのかについて深く考えさせられる作品でもあります。
それでいて、やはりそれに気づいてくれ、寄り添ってくれる誰かの存在が大きいのだと感じました。
本作ではマッチングされたカザマがそうでした。
飾らないまっすぐな状態で受け入れてくる存在。
見た目に関係なく接してくれる存在。
以前の舞台に立っての原作の終わらないデュースとも似たような感覚をおぼえました。
現代社会の問題×アクション
初めて読んだときは急展開過ぎて、正直ついていけないところもありましたが、何度も読み返していくことで、より深く魅力を感じていけると思います。
YOASOBI原作『白山通り炎上の件』新曲予想
「白山通り炎上の件」を原作としたYOASOBIの新曲は、いくつかのポイントで特有のスタイルが反映されると予想されます。
YOASOBIは、日常的な感情や内面の葛藤をテーマにして、ストーリー性を持つ歌詞とメロディを作り出すアーティストです。
この作品を元にした楽曲がどのようになるのか、以下に2つのパターンで予想をしていきます。
1. エモーショナルでダークなトラック
この作品のテーマは、職場における孤独感や自己犠牲、社会の不条理に対する怒りや悲しみです。
そのため、YOASOBIの新曲は、感情の波を反映したエモーショナルでダークなトラックになる可能性があります。
ゆっくりとしたテンポで始まり、徐々に緊張感が高まりながらクライマックスに向けて感情が爆発する展開が考えられます。
例えば、ピアノやシンセサイザーを中心にしたメロディが、内面の不安定さを表現し、サビでは感情が高ぶるようなパワフルなサウンドに変わるスタイルが予想されます。
また、歌詞では「おじさん社会」の中での女性の葛藤や抵抗感が強調され、「居場所を失う恐怖」や「自分を見失うことへの苦悩」が表現されるでしょう。
2. ポップでシニカルなアプローチ
一方で、YOASOBIは時折、ポップで明るいメロディにシニカルな内容を織り交ぜるスタイルも得意としています。
そのため、「白山通り炎上の件」も、明るいポップなサウンドに乗せて、皮肉を交えた歌詞が特徴的な楽曲になる可能性もあります。
たとえば、軽快なリズムやアップテンポなビートに、主人公の「のぞみ」が感じる社会の不条理や自己犠牲の感情を込めた歌詞を組み合わせることが考えられます。
メロディ自体は楽しげでも、その裏には苦々しい現実が隠れているという、ギャップが印象的な楽曲になるでしょう。
このような曲調は、聴き手に強いメッセージを届けつつ、軽やかに受け入れられるのがYOASOBIの魅力の一つです。
YOASOBI新曲原作『白山通り炎上の件』あらすじは?感想やレビューも【ネタバレあり】まとめ
「白山通り炎上の件」は、現代社会におけるジェンダー問題や職場での人間関係の闇を深く描いた作品です。
アクションシーン等も交え、非現実を体験したからこそ、せき止めていた感情が爆発し、見失っていた自分を思い出します。
今のハラスメントの世の中で、ここまでのことはないかもしれませんが、少なからず理不尽に感じることもあるのではないでしょうか。
そういった意味合いでもこの作品に共感できる方は少なくないと思います。
ただ一回で物語を理解するのは難しいかもしれません。
そのため、YOASOBIがこの作品をどのように音楽に昇華させるのか。
このジェンダーな問題に立ち向かう主人公をどう音楽で表してくれるのか。
非常に楽しみです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。